300年、代々受け継ぐ山の営み
「西川林業地」と呼ばれる埼玉県飯能市で代々林業を営んでいます。
経営面積は約80haと小規模ながら、丁寧な育林による優良材生産を300年に渡り継承してきました。
西川林業地
埼玉県の南西部、荒川支流の入間川・高麗川・越辺川の流域は「西川林業地」と呼ばれています。江戸時代、この地域から木材を筏により消費地である江戸へ流送しており、「江戸の西の川から流れ下ってくる木材」、ということからこの地域の材が「西川材」と呼ばれるようになりました。
私たちの林業
井上林業(有限会社創林)は、西川林業の黎明期からその歴史を共に歩んできました。丸太の販売記録などから推定すると、少なくとも江戸時代の中ごろには造林を開始していることが分かっています。
そのため、所有・管理する山林では「立て木」と呼ばれる大径木を残すなど、当地域独自の施業体系を今に引き継いでいます。
森林の構成は針葉樹の造林を主とした、いわゆる「人工林」と呼ばれる山林が大半を占めていますが、決して単純な林相ではなく、下層には広葉樹の種数も豊富で多様な動植物を育んでいます。林齢についても植栽したばかりのものから200年生を超えるものまで様々です。
例えばこの写真のエリアには約180年生のスギヒノキのほか、ウリノキ、ケヤキ、オオモミジ、ミズキ、ヤマザクラ、サワラなど多様な樹種が生えており、大きなうろのある木にはムササビが棲んでいます。
このように森と人が共生しながら織りなす豊かな生態系があり、それらを後世に残していくことも私たちの役割です。
山仕事の様子
-
丁寧な育林
江戸時代に植林を開始してから、植え、育て、収穫するというサイクルを時に100年以上かけて行います。
所有面積が少なく大量出材はできませんが、その代わりに良質材生産のための枝打ちや間伐などの質を高めています。
-
路網(作業道)の整備
伐採した木を搬出することはもちろん、森林空間の活用においても、路網の整備は必須です。できる限り誰でも歩きやすい道をつくり、林業の現場を見学しやすくしています。
-
山に負荷をかけない伐採
小さい面積で質の高い林分を維持するために、間伐や搬出作業時には周囲の残存木を傷つけないように細心の注意を払って作業をしています。
また、野生動物の住処となっている木は保存するなど、森林生態系にも配慮した収穫を心がけています。
山林の利用
原木販売から森林空間の活用まで
特殊注文材の販売
質の良い木を育てるには丁寧な手入れが必要です。下草刈り・枝打ち・間伐などの作業を、木の成長に合わせて要所要所で行うことで、やっと一人前の木になります。私たちは世代を越えて育林を継承してきたことで、大径材、長尺材など、社寺建築などでも使われる一級品の原木を提供できます。
イベント開催、林業の研修
子ども・一般の方向けの木こり体験、森林散策のイベントから林業や木材に関わるプロ向けの研修まで、山林内を使ってさまざまな学びや体験の場を提供しています。
都心から最もアクセスの良い林業地だからこそ、森林や林業への入り口としてまずは直接体験して知っていただく機会を積極的につくっています。