
井上林業とは
私たちの原点
井上林業は、現在の私たちの事業の原点であり、木楽里のすべてのサービスの基盤です。江戸時代中期から、ここ埼玉県飯能市の西川林業地域で、私たちは山と共に生きてきました。
目先の利益や流行に流されることなく、100年、200年先の未来を見据え、一貫した信念を持って木を育て続けること。それが、私たちの変わらない姿勢です。
ここでは、井上林業の300年にわたる歩みと、山づくりへの想い、そして未来への取り組みについてご紹介します。

歴史
300年の歩み 西川林業地とともに
埼玉県の南西部、荒川支流の入間川・高麗川・越辺川の流域は「西川」林業地と呼ばれています。江戸時代、この地域から木材を筏により消費地である江戸へ流送しており、江戸の西の川から流れ下る木材であったことから、この地域の材は「西川」材と呼ばれるようになりました。
井上林業はそんな歴史ある林業地の黎明期からその歴史を共に歩んできました。
江戸時代中期
1700年代初頭頃
創業期
造林を開始したという正確な記録は残っていませんが、丸太の販売記録などから推定すると、井上家はこの頃から小規模ながら植林を始めたようです。計画的な造林による素材生産を本格的に行うのはもう少し後になってからで、まだ天然林からの伐採が中心でした。
今でも状況は似ていますが、丸太の生産だけではなく薪炭生産や農業などを「複業」的に営んでいました。
江戸時代後期~昭和初期
1800年代~1920年代頃
造林と木材販売の本格化
江戸時代後期になると造林面積を拡大し、筏による江戸への木材輸送も本格化しました。特に8代目井上助次郎は熱心に山林経営に励んだようです。
当時植えられた木々は樹齢200年ほどになり、現在の山林を形作る礎となっています。
大正時代には輸送手段が筏から鉄道、そしてトラックへと変化していきました。
昭和前期
1930年代~1940年代
太平洋戦争による荒廃と復興
戦争による木材需要の増大と国策による強制伐採により、この地域の美林は次々に伐られていきました。私たちの山も例外ではなく、代々守ってきた最も古い山林がここで姿を消しました。
当時病床に伏していた11代目井上信太郎は、裏山で次々に伐り倒される音を聞き、涙を流して嘆き悲しんだそうです。
戦後はそのような失意の中でもいち早く伐採跡地への植林を再開。この時に植えられた木々も今では樹齢70年を超え、立派に成林しています。
戦後
1950年代~1980年代
空前の好景気と地域への貢献
13代目井上峰次の時代、戦後復興に伴う木材需要の高まりで好景気を迎えます。古くから良質な木を育ててきた井上林業には、他地域からも注文が舞い込みました。
峰次は家業としての山林経営に加え、東吾野森林組合(当時)の組合長を務め、さらに林業史や郷土史の研究にも力を注ぎ、西川林業に関する多くの貴重な資料を残すなど地域林業の発展にも貢献しました。
平成~令和
1989年~現在
木材価格の低迷と新たな挑戦
1980年代以降、木材価格は下落傾向となり、原木販売だけでは経営が厳しくなりました。14代井上淳治は1993年に「有限会社創林」として法人化、1997年には木工房「木楽里」を設立し、木工や木育活動を開始。木に触れる機会を創出することで、木の良さを再認識してもらおうと考えました。
そして2024年、15代目井上峻太郎へ事業を承継。300年の歴史と想いを受け継ぎ、現代に合わせた林家ならではの林業経営と、山の価値を多角的に活かす新たな挑戦を始めています。
理念
井上林業が300年にわたり山づくりを続けてこられたのは、単に木を育てて売るという経済活動だけを目的としてきたからではありません。
そこには、山と、山に関わる人々への深い想いがあります。

先人への敬意と
次世代への責任
今ある山林は、過去の先人たちが未来を信じて植え、育ててくれた大切な「遺産」です。
彼らが先の見えない中でも「いい木を育てよう」と汗水垂らした努力を受け止め、その価値を最大限に引き出し、次の世代へと確実に引き継いでいくこと。
それが、山を受け継いだ私たちの最も重要な責任だと考えています。
今こそ質の高い山づくり
江戸に近いという地の利を活かし、質の高い材木を供給してきた西川林業。その伝統を受け継ぎ、「質」を重視することが私たちの基本姿勢です。特に、伝統的な建築や木桶などに使われるような、良質な木材の生産を目指しています。
しかし近年、そのような木を丁寧に育てる林業家は減少しつつあります。手間暇かけた育林コストが価格に反映されにくい厳しい状況ではありますが、質の高い山づくりを継承していくことこそが、木の文化を次世代へと引き継ぐことだと信じています。


今こそ質の高い山づくり
江戸に近いという地の利を活かし、質の高い材木を供給してきた西川林業。その伝統を受け継ぎ、「質」を重視することが私たちの基本姿勢です。特に、伝統的な建築や木桶などに使われるような、良質な木材の生産を目指しています。
しかし近年、そのような木を丁寧に育てる林業家は減少しつつあります。手間暇かけた育林コストが価格に反映されにくい厳しい状況ではありますが、質の高い山づくりを継承していくことこそが、木の文化を次世代へと引き継ぐことだと信じています。

経済性と環境保全の両立
林業を持続可能なものにするためには、経済的な視点も不可欠です。しかし同時に、森林は木材生産の場であるだけでなく、多様な生命を育み、水を涵養し、私たちの暮らしを守るかけがえのない存在です。
私たちは、経済的な合理性を追求しつつも、森林が持つ多面的な価値を守り、高めていくことを目指しています。
山づくり
健全な山林を維持し、質の高い木材を生産するためには、木の成長に合わせ世代を超えた手入れが欠かせません。

植栽
全ては木を植えるところから始まります。(苗木生産から行う場合もあります。)植栽本数は一律ではありませんが、スギやヒノキの場合概ね3000〜6000本/haほどです。
また、現在はシカによる食害(植えた苗木を食べられてしまう)が深刻化しており、侵入防止のネットを張ることが必要です。基本的に春(3〜4月頃)に行います。
下刈り
植栽後、苗木の成長を阻害する他の草木を刈り払う作業です。真夏(6〜8月)の時期に、〜6年目までは年2回、〜10年目までは年1回を目安に行います。
炎天下の中で行うので非常に過酷ですが、苗木の健全な初期成長を促す重要な作業です。大変な労力を使うので、できるだけ省力化できないか検討しています。


雪おこし
この地域は比較的雪が少ないですが、積雪が多い年には、雪の重みで曲がった若い木を、春先に縄を使って起こし、根曲がり(木が根元から曲がってしまうこと)を防ぎます。
枝打ち
木材の質を高める(無節の材を得る、成長をコントロールし年輪幅を揃える)ために行う、特に重視する作業です。
通常、植栽後5~6年目頃から始め、20年生頃までに4回ほどに分けて行います。最終的には7m~9mほどまで打ち上げています。作業は主に晩秋から冬(11〜2月頃)にかけて行います。


除伐・間伐
木々が成長し混み合ってくると、残す木の成長を促し、森林全体を健全に保つために一部の木を選んで伐採します。森林内に光を入れて下層植生の発達も促すことで土壌も豊かになります。
タイミングや回数は植栽本数や、山林の状況により変わりますが、10年目前後から行うことが多いです。理想的には、育成木の成長を促しつつ、伐採木も有効に活用できることです。できる限り、育成木の保育が目的となる若齢期の間伐の場合も、少しでも素材として活用できるように努めています。作業は主伐も含め、基本的に秋〜冬(9〜2月)に行います。
主伐
皆伐(全ての木を伐ること)は0.5ha以下の小面積で実施することがほとんどです。皆伐を行う場合は、「立て木」と呼ばれる優良木を伐り残すこの地域ならではの施業を今でも行っています。
メインは択伐(選んだ木を抜き伐りすること)です。特に特殊用途の原木が必要な注文材の場合は、目的に合致した木を選ぶことはもちろん、山林全体のバランスを見て伐る木を選んでいます。また、搬出作業時には周囲の残存木を傷つけないように細心の注意を払って作業をしています。


路網の整備
伐採した木を搬出(山から運び出す)することはもちろん、森林空間の活用においても、路網(作業道)の整備は必須です。できる限り誰でも歩きやすい道をつくり、林業の現場を見学しやすくしています。
今後の挑戦
伝統的な手法を大切にしながらも、現代の課題に対応し、未来を見据えた取り組みも進めています。

森林認証を取得
「森林認証」とは、木材が持続可能な森林から伐採されたものであることを、第三者機関が審査し認証する制度です。日本では認証森林の面積は森林全体の10%程度、認証制度の認知度もまだ高くありません。しかし欧州では、認証森林が80%を超える国々もあり、木材取引においては認証取得が当然になりつつあります。井上林業の山林は100% SGEC/PEFC認証を取得しており、基本的にすべての木材を森林認証材としてご提供いたします。森林認証製品を選ぶことは、持続可能な森林管理を支援することにつながります。企業の皆様が、持続可能な木材調達の責任を果たすためにも、安心して選んでいただける木材です。

1. 山林管理の低コスト化
経営面積は約80haほどと、林業経営としては決して大きくありませんが、その所有林は一箇所にまとまっておらず、40箇所に分散しています。このため、管理コストがどうしても高くなりがちです。
そのような小規模分散型の山林で最大限の利益を確保するため、GIS(地理情報システム)の活用を進め、山林の状態(どこにどのような木があるか、林分や作業道の状況など)を机上で正確に把握できるように見える化を進めています。また、各作業についてもこれまで行ってきたことをそのまま継続するのではなく、省力化の余地がないか検討しながら進めています。
コストを抑えながら質の高い山を育てるための試行錯誤は、常に私たちの課題です。

2. 多面的価値の活用
現代の林業、特に私たちのような小規模な林家にとって、木材生産(素材生産)だけで山から十分な収益を得ることは容易ではありません。
そのため、私たちは木材生産に加え、山の空間そのものを活用した体験サービスの提供や、専門知識を活かした研修を実施するなど、山林の持つ多様な価値を引き出し、持続可能な経営を実現するための新たな挑戦を続けています。
山の恵みを、あなたへ
井上林業が丹精込めて育てた山と木。
その恵みは、木楽里の温もりある木製品や、五感で自然を感じる体験サービス、そして特別な建築やものづくりに応える特殊注文材へとつながっています。
井上林業の取り組みについて、さらに詳しく知りたい方は、ぜひ関連ページもご覧ください。
サービス

特殊注文材
公共建築・注文住宅・神社仏閣や木桶まで。ここぞ、という場所に使うための一級品の原木(木材)の注文材サービス

企業・団体研修プログラム
チームの成長、ウェルビーイング向上、環境経営の実現をサポート。都心に近い深遠な森で行う、本格的な森林体験研修。

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